GDに、オフ本再録分をアップしました。
冠累の『フェティッシュは夢の中』です。
参加した最後のイベントが2008年の記録があったので、
もう丸4年も引きこもってる事になります。
その最後のイベント用フォルダに書きかけの本由があったので
こちらにアップしておきます。
もう、何が書きたかったのかも判らないので尻切れトンボどころか
起承転結の起で終わってるので半端なく中途半端ですが、
完成できないと思うので。
興味がある方は、下の“半端物”ボタンからどうぞ。
ああ、もったいないことをした……orz
■君は絶対僕のもの。僕も絶対君のもの。
謹慎──と、冷たく西脇が告げる。
最初、その言葉の意味がよくわからないでいた本木だったが、吸った息を吐き出す直前、ようやくそれを飲み込めた。呼気と共に大声を張り上げる。
「どうしてですか! 俺、なんも失敗しちゃないですよ?!」
「じゃあ聞くが、お前ここで何してる?」
「何って、遅番ですから申し送りに……」
「その格好でか」
指摘され、本木は自分の姿を見回した。きちんと夏服は着ているし、ネクタイもきっちり結んでいる。何がおかしいのだろうと真剣に悩む本木に、西脇はあきれ声をこぼした。
「包帯も取れてないヤツは、大人しく寝ていろ」
西脇の指摘通り、本木の頭部には厳重に包帯が巻かれており、顔や夏服の半袖から伸びる腕には多くの擦り傷が残っている。服に隠れて見えないが、左脇腹にも大きな裂傷を負っていた。
堺医師から絶対安静を言い渡されており、復帰可能の報告を受けたおぼえは、西脇にはない。
なにせ、ザックガッセによるラジコン飛行機襲撃事件から、一週間と経っていないのだ。重傷者に数えられる本木が、もう職務に就くこと自体、無茶なのである。
「かすり傷ならともかく、そんな包帯巻いているような重傷者を現場に出すわけにはいかん。対外を考えろ」
「だって、俺はもう大丈夫で……」
「それは堺先生が判断する。堺先生がいいと判断するまで、お前は謹慎だ。いいな。無視するなら命令違反として、本当に謹慎くらわせるからな」
そこまで言われると、本木は何も言い返せなかった。
自室へ戻り制服を脱いだ本木だったが、医務室へ帰る気は起きない。ジムへ行って体を動かしたいとも思ったが、止められて怒られるのがオチだと考えると、足は自然に食堂へ向いていた。
勤務するつもりだったため、食事はすでに済ませてある。だからコーヒーだけを取ると、空いている席に座った。すると早番を終えて食事に来た外警の者達に見つかり、早速先ほどの西脇とのやりとりをからかわれたのである。
「何だ、まだこんな所にいたのか? 医務室で寝て無くていいのか?」
「早く帰らないと、班長に怒られるぞ?」
「うるさいなぁ。コーヒー飲みたいんだからほっといてくれ」
さんざんからかうだけからかうと、同僚たちは食事を終えるとさっさと食堂を去っていく。
すっかり冷えたコーヒーを前にぼんやりしていると、本木の隣に腰を下ろす者がいた。
「由弥」
早番勤務だった、野田由弥だった。本木の表情がぱっと明るくなる。逆に由弥の方は、困ったような表情で、眉間を寄せていた。
「西脇さんに聞いたよ?」
その一言だけで、由弥の言いたいことは全て伝わった。本木はしゅんと肩を落とす。
「ごめん。俺、どうしても、じっとしてられなくてさ」
なにせ、事件の三日後から、出勤すると言ってベッドから抜け出そうとするのである。それは今に始まったことではなく、過去、本木が大けがをするたびに繰り返していた事であった。
「気持ちはわかるけど、今は怪我を治すことが大事だろう? それが惣吾の、今の任務なんだよ?」
「判ってはいるんだけどさ……」
「じゃあ本木、手伝いを頼んでもいいかな?」
しゅんとうなだれる本木に声をかけたのは、由弥の兄、優弥である。
「ちょっと、男手が欲しいんだよ」
「いい空気だなぁ」
全身を使って大きく深呼吸した本木は、眼前に広がる夏葉の山を見渡した。
寮を出て車で二時間。同じ都内とは思えないほど喧噪に縁遠く、耳に心地よいざわめきに満ちていた。
ただし、本木が居るのはキャンプ地であるため、人の声から完全に切り離されることはない。
それをも厭い、もっと山奥へ行きたいと言っていたのは、由弥の義姉であり、優弥の妻である皐だ。
通常であれば、その願いを叶えるべく行動を起こす皐だったが、何せ妊娠中の身である。あまり無理をせず、自然を楽しみたいという願望も叶えるために選んだ地が、ここ、西東京のキャンプ地だった。
しかし、無理をしないために近場を選んだにもかかわらず、キャンプ生活を満喫するために体がうずうずし出すのが皐である。そのけん制として優弥が打った手が、本木と由弥だった。つまり、働き手は沢山居るから、皐は安楽椅子に座ってのんびりしてくれ、という意味である。
本来ならばけが人扱いの本木だったが、議事堂の側に居るよりは安静に出来るだろうと、外出の許可がおりたのである。