ジルコン

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アレ城
[01] ギフト
西やんと内藤さん
[03] コール
冠累
[02] 約束
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[06]料理☆爆弾
     
[04] Don't cry,my Blue.
             
[01] 認められない理由
   

冠累

ちがわないよ

 明日が提出期限の開発申請書類をもう一度作り直す羽目になったのは、昼間M氏が来訪したのと同時にバックアップごとファイルがトンでしまったからだった。
 その書類の担当は自分と、開発班に加わった新戦力の植草。
 他のメンバーが定時にあがり、二人で居残りを始めて数時間が経っている。そろそろ腹が減ってきたな、と思った頃、隣のパソコンで作業をしていた植草が、どこぞのホラー映画よろしく、突然首をぐりんとねじ曲げて話しかけてきた。
「くぁんさん、中国のちゅーと日本のちゅーって、どう違うんですか?」
 今まで黙々と作業をしていたのにもかかわらず、突然口を開いて出た質問がこれだ。第三者からみれば、「やっぱり植草は不思議ちゃん」に見える質問だが、これにはちゃんと前置きがある。
 消失したデータのバックアップを必死に探している時に、我々以外の開発班メンバーがのんきに討議していた議題なのだ。『ちゅー論』を熱く語る欧米組に対して頷くしかできない日本人ペアでは、討議もクソもなかったが。
 それが五時間ほど前のことだということに目をつぶれば、植草の行動に『唐突』という形容詞は付かない。
 質問内容とは裏腹に飄々と尋ねる植草へ、うむ、と頷いてみせる。
「いいところに気が付いた、うえぽん」
 キャスター付きの椅子に腰掛けたまま、それを引きずるように植草へ近寄り、彼を椅子ごとぐるりとまわして向き合わせる。
 そして、軽く唇を合わせた。
「わかった?」
 植草は少しだけ眉間にしわを寄せると、首を横に振る。
「わからない」
「うーん。わかりやすくしたんだけどなぁ」
「もう一回」
 請われて、もう一度唇を重ねる。
「どう?」
 植草は、またも動作を繰り返す。
 しかたないなぁ、と大げさに溜め息をついて、今度は植草の頬を両手で包み、深く口づけた。
 植草を充分に味わって、最後に下唇に歯を立ててやる。
「どう?」
「──ヒゲがちくちくする?」
 首を傾げた植草は、本当にわからないようだった。
「ぶっぶー、ふせいかいー」
「答えは?」
「ひーみーつー」
 不揃いの髪があちこちに跳ねる頭を乱暴に撫でて、植草を椅子ごとパソコンに向き合わせる。
「わかるまで明日から特訓決定だな。覚悟しろよ、うえぽん」
「むー」
 植草は眉間にしわを寄せ、口を「へ」の字に曲げたまま、作業を再開した。
 自分もパソコンの前に戻り、同じように作業へ復帰する。
 『ちがわない』という答えに植草が行き着くまで、何日かかるだろうと思いながら。
― 了 ―

あとがき
 初の冠累モノです。最初はWEB拍手お礼用に書いたんですが、長くなったのでこちらでの掲載に変更しました。
 最初、私室での出来事にしようと思ったんですが、うえぽんが開発に来るとの噂を聞き、急遽M氏に泥をかぶって頂きました(笑)
 
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